ブロードチャーチ シーズン1
『ブロードチャーチ・シーズン1』(全8話)
観終わりました。
【あらすじ】
海沿いの小さな町、ブロードチャーチでは、平穏な生活が送られていた。
しかしある1人の少年ダニーの死体が海辺で発見され、町の生活は大きく変化する。
事件の捜査を仕切るのは、町に赴任してきたばかりの刑事アレックス。
地元女性刑事エリーはアレックスの押強い捜査と、
友人でもある容疑者への配慮の板挟みに苦悩しながら捜査にあたる。
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はっきり言って、予想を大きく上回る面白さでした。
さすがイギリスドラマの十八番、群像クライムサスペンスです。
こういう暗く陰鬱な雰囲気のドラマは、
物語がのっぺりしがちで中盤で中弛みが起きてしまう、
というのがどんな名作にもありがちな所です。
不思議なことに『ブロードチャーチ』は違います。
むしろ、中盤からみんなノリノリになってきます。
この閉鎖的なシチュエーションにおいて、どうしてこんなにノリノリな物語が書けるのか。
まさに、描かれた群像の巧さが光る作品でした。
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このドラマの原作・脚本を担当したのは、
知る人ぞ知る名脚本家クリス・チブナル。
面白いはずです。
彼はイギリス版『LAW&ORDER』、『torchwood』などの脚本を書き、
そして『DOCTOR WHO』の次期総指揮監督に任命されている脚本家です。
『DOCTOR WHO』や『torchwood』を観た時も、
人間模様の苦い交錯を書くのが巧い脚本家の方だな、と思っていたのですが、
今回の『ブロードチャーチ』は、まさにその本領発揮といった所でしょう。
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"英国で最高視聴率34%を記録"
クライム・サスペンスに対して厳しい目を持つイギリスで、この数字は驚異の記録です。
犯罪ものだからって、証拠探しやトリックに凝るのでなく、物語全体で人間自体にフォーカスしてるところが好きですね。
町に赴任してきたばかりの刑事アレックスは、
住人たちの事情など御構い無しに捜査に踏み込み、
一方、地元刑事のエリーは、自分の友人が容疑者となることに戸惑います。
捜査が進むにつれて、
一見平穏に暮らしていた住人たちの生活の影が次々と明るみに出て行き、
ある者は傷つき、ある者は信頼を失い、ある者の生活は崩壊する。
そして、事件の犯人が明らかになった時、町中に震撼が走る。
邦題では『殺意の町』というサブタイトルがつけられていますが、
町全体に流れるのは、殺意というよりもっと泥臭い人間の愛憎。
誰が持っていてもおかしくないような秘密、過去、悩み、過ち。
そして最後には愛と、儚さと、虚しさを感じます。
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最初は正直あまり期待はしてませんでした。
まずクライム・サスペンスのジャンル自体が飽和状態なこともあり、最近は謎解き役をいかに個性的なキャラクターに仕上げるかでなんとか持っている、みたいな風潮です。
そんな作品が乱立する中で『ブロードチャーチ』のあらすじは、 全くパッとしません。
特に個性的な刑事が出てくるわけでもない、
複雑怪奇な連続殺人事件が起こるわけでもない、
何か特殊なシチュエーションが用意されているわけでもない。
さらに、メインキャストの刑事アレックスを演じるのは、
イギリスではまず知らない人などいない、デイビッド・テナント。
彼はイギリスの国民的ドラマ『DOCTOR WHO』でドクター役を演じ、
"歴代最高のドクター"とも言われた超有名人です。
ありふれたあらすじ、そして有名人の抜擢。
この組み合わせは嫌な予感しかしません。
どうせ焼き直しのストーリーに、
有名俳優だけ持ってきて視聴率を稼ごうという
ありがちな魂胆なのでは?
しかし、実際に観てみると、
そんなあさはかな打算をしていたのは、
素人の自分だけだったと気がつき恥ずかしくなります。
彼らはそんな予想を大きく裏切り、
話が進めば進むほどにのめり込む、確かに面白い物語に仕上げくれています。